亜甲絵里香の夏、再びアテネ
山椒太夫inアテネ

亜甲絵里香

アテネの国際ダンス会議に昨年に続いてご招待を受け参加してきました。

今年は、6月の4日と5日の両日、青山円形劇場で「原爆の図」を上演してその後にアテネの準備にかかったのですが、今年の会議のテーマ「リズム&ダンス」に関連して、私は主催者のアルキス・ラフティス氏から、日本の伝統的なダンスとリズムについての講演も依頼されていました。

しかし、日本の伝統的な舞踊といってもあまりに幅が広いことと、資料を自分で集めている時間もなく困惑していたところ、ありがたいことにある方のご紹介で、日本の文化について国際交流をされている方から資料とアドバイスをいただけたので、自分のテアトル・ムーヴマンと古代のギリシャ演劇との関連性を感じた「能」を取り上げ、ビデオを見せながら講演をし、アルキス氏を始め出席者からとても書ばれました。

同じ日の夜のパフォーマンスでは、日本民話から創作した「山椒太夫」を上演しました。この話は安寿と厨子王の話として知られ、母親はあまり描かれていないのですが、私はこれを逆に、我が子と引き離された母親の話として、その嘆き悲しみ苦しみと、希望を持って生きることの大切さを描きました。

今回は生徒の中から、小学2年生から中学1年生までの5人と女子大生1人、それに私の息子と娘を共演させましたが、アテネのドラ・ストラトウ・シアターの神秘的な雰囲気に押されて、皆が本当に生き生き、のびのびと踊りました。

終演後実際に自分の姉を亡くしたというイスラエルとギリシャの方から、自分の人生と重なり、希望を持つことの大切さを教えられた、ありがとうと言われたこと。

アルキス氏から最高の賛辞を頂いたこと。そして何より、本番の舞台とパルテノンやポセイドンの神殿、エーゲ海クルーズなどの旅を通して子供達がしっかりと自分を持つまでに成長し、帰国後も各ご家庭から「子供が変わった」「明るく機敏になった」などと着びの声を聞かせていただくだびに、この会議に参加することに大きな喜びと意義を感じるのです。

Scene(セーヌ)1998 春 第30号

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