亜甲絵里香
「サロン・ドゥ・ラ・ダンス」とは、世界中から集まった、クラシック・モダン・ジャズ・フォルクローレなど、あらゆるジャンルのプロのダンサー達が10日間に渡って踊りを披露 するフェスティバルで、バリ市とバリ第13区の共催で1年置きに開催されています。
私は前回ご招待を受けて踊った50分のソロ作品、「ル・ポエム・ドゥ・ユヌ・フルール」“花の詩"が大好評で、再びご招待を頂き、今回の第7回「サロン・ドゥ・ラ・ダンス」に出演致しました。
パリの舞台に立つたび感じることは、とにかく観客の反応がストレートだと言うこと。
良いものは良い、悪いものは悪いと素直に反応する。良い作品を踊ればすぐに楽屋まで駆け付けて、感想や批評や質問を率直にぶつけてくる。踊って良かった。パリヘ来て良かった。本当にそう感じるのです。
今回私は、長男の瀬河寛一を一緒に出演させることにしました。それは、この感動を寛一に味わわせてやりたかったからです。彼が今、この感動を経験することは、将来に計り知れない程の良い影響がある筈だと考えたのです。
私の期待に寛一は応えてくれました。パリヘ飛ぶ飛行機の窓から見た、全てを吸い込むような陽の光と、どこまでも広がる雲海に神を感じ、パリの芸術的な町並みこ感動し、それらこの世に存在する素晴らしい物全てを、見ている人と通じ合えるような踊りをしたいと心掛けたと言います。
本番では踊っている間、観客の目が本当に暖かく自分を見てくれているのを感じ、落ち着いて自分の表現を打ち出し、私とのデュエットではこの世の汚いものは相手にせず、美しい、本当に純粋なものを追って今までのように、共に強く生きて行こうと、心を込めて踊ったと言ってくれました。
踊り終わってロビーに出て、感想や激励を言いに駆け寄って来る、年齢も雑多なお客様達に戸惑いながらも感動に上気し、ガラ・コンサートで、オペラ座のダンサー達の基本に裏打ちされた、素晴らしく魅力的なモダンの踊りを見て、基本を極めることの大切さを痛感し、クラシックの基本を修得しようとする欲望に目覚めて、今レッスンに励んでいます。
もともと不器用で、こつこつ型の子でしたから自信をつけた時は強いのです。今目覚め努力をすることで、将来必ず何かをやってくれるとの希望を抱くことが出来るようになりました。
ありがとう パリ!
ありがとう サロン・ドゥ・ラ・ダンス
Scene(セーヌ)1992年 冬 第4号