舞踊評論家 林愛子
第2回亜甲絵里香インターナショナル・ダンスコンサートは、「大地の詩-自然に帰れ-」のテーマのもと、8か国のダンサーが集まった。第1部は27人のダンサーが音楽とともにおだやかな時間の流れをかたちづくる『太古・平和』(振付・亜甲絵里香、瀬河寛一)。続く第2部は、11の作品を集めた「小品集」で、“ジャンルは違ってもダンスはダンスである"という主催者側の姿勢がうかがえる。
まずフランスからはモダンジャズダンスの踊り手マエ・ピガで、ダンス・クラシックの技法も身につけた彼女は、ショウ・アップされた『National Women』『Yesterday』の自作を踊った。
アメリカのフォング・トレルフォードとミッシェル・フランソワ・ジャックは、ボールルーム・ダンスを3曲披露。スロウ・ワルツやフォックス・トロット、ルンバなど、いわゆる社交ダンスのステップを見せてくれた。
スリランカの民族舞踊(カンディアン・ダンス)では、銀の飾りを全身に身につけたスサンタ・スラセナが、独特の踊りで客席を沸かせ、アメリカ人アテナ・ナジャのベリー・ダンスは、現代風の味付けでショウ・アップされていた。
カナダのマリー・ジョゼ・ラルーシュとナタリー・ルベルによる『Quand le fluide deviant tangibe…』は、自然の持つ神秘的な力を歌い上げるかのよう。これは今回のコンサートのテーマを思わせた。
ここではいわゆるクラシック・バレエ『Don Juan』(グラシェンコ振付)も瀬河華織、エフゲニー・グラシェンコのコンビで踊られるなどプログラムは盛り沢山だ。
第2部での瀬河寛司の『Solo Bach』は、俊敏さを全身から放つ彼のムーヴメントがバッハの曲に溶け込み、ストイックな雰囲気にあふれる秀作だ。
彼と瀬河寛一の2人による『other side』(瀬河寛一・振付)は、椅子とパーテーションを巧みに用いた切れ味のいい動きでみせていく。兄弟同士の関係を生かした2人のダンスは、心の中にいるもう1人の自分との葛藤のようでもあり、ダンサーとしても奥行きの深さを感じさせるものだった。
さて、第3部『大地の詩』(亜甲・振付)は、2部の出演者にさらにゲスト清水フミヒト、稲吉勝らも参加。
天地創造から始まり、希望と愛に満ちた終幕までを絵巻のように繰り広げていく。
“嫉妬"“破滅・破壊"“戦い"“水"“火"等々、人間界の出来事、現象をとりあげてそれぞれを上手い踊り手たちが見せた。
エピソードを連ねた作りは、テーマがくっきりとは見えにくかったものの、創造感、彼女を囲むダンサーたちの個性が、このバレエコンサートに祝祭的な明るさをもたらしていた。
(9月13日 厚木市文化会館大ホール)
バレリーナへの道 第75号掲載