瀬河寛一
みなさんこんにちは、お元気ですか?
parisもすっかり夏になりました。今年のparisは異常な程暑く、まるで日本の夏の様です。
さて前回のジジ・カチュレアヌとのツアーのあと、今回はスイスのローザンヌにあるファビエンヌ・ヴェルジェールという人のカンパニーと働きました。ファビエンヌのカンパニーで働いていた友達が今回他のカンパニーと働いていた為、僕に代役を務める様頼まれました。
さてツアーですが、なんとイスラエルのすぐ北にあるレバノンに行って来ました。始めレバノンと聞かされた時、毎日ニュースで戦争の事を話しているあのレバノンかと、そんなところへ行って本当に大丈夫なのかと心配しました。
着いてみるとやはり町の建物は破壊されていて、町を歩くと軍人が機関銃を常に持ち歩き、僕はなぜここにいるのだろう?と本当にタイムスリップした印象を受けました。
しかし現状はレバノンの南のほうの町がイスラエルとの間でやりとりをしていて、僕が滞在したレバノンの首都ベイルートでは住民は普通に暮らしていました。
今回スペクタクルと同時にファビエンヌがレバノンのダンサー達の為に講習会を開き、そこに来ていたダンサーたちに現状を聞いてみると、キリスト教派とイスラム教派の争いが常にあるが私達若い世代はその様な宗派に関係なく1人の人間としてもっと大事な事、特に私はそんな事よりもダンスを信じたいと言っていました。これを聞いた時、僕はダンスの力は本当にすごいなと思いました。こんなところにも僕が愛してきたダンスを信じる人達がいる。そんな国で今回踊るという意義と責任と自分の恵まれた役割を、僕にできる全ての魂と平和への願いを込めて3日間踊りましたが、改めてなぜ自分がダンスをやっているのか、またダンスを通して何を人に伝えてゆくことができるのかということを、改めて考えさせられました。
さて今年の夏8月に日本にある母親亜甲絵里香のスタジオで講習会を開きます。それはなぜかというと、今まで僕が経験して学んできたものをそろそろ人に伝えられるころではないかと思うからです。もちろんダンサーとしても続けていきますが、人に自分の意志を伝達してゆくことによってもっと深く自分自身が見えてくればと思います。
もっと遠くへゆくためのステップです。そしてこれからは今まで出会った素晴らしい友人達と自分達の今を、そして最後には瀬川寛一としてダンスを通して形として表現できる様に、努力をしてゆきたいと思います。
2001.6.30 parisにて
セーヌ 2001年夏 第42号掲載