ニューヨークで学んだ
「大切なこと」とは?

瀬河華織

私はフランスから帰国し、又すぐに9月のNewYork公演がありました。この公演は母が初めて、アルヴィンエイリーのプリンシパルダンサーだったエリザベスロハスさんとイガールペリーダンスアンサンブルに所属しているダンサー、エリザベスレモントさんに振り付けをする大切な公演であり、又私に寛一、寛司の2人の兄と共に外国で同じ舞台を踏めることのできる初めての公演でもありました。

8月の28日、NewYorkに着き翌日からイガールペリーダンスのスタジオで、ロハスさんやレモントさんらと、皆笑顔で顔合わせをして練習が始まりました。

作品は寛一兄と私とスタジオの生徒2人で踊る「戦火の街」と、寛司兄とレモントさんで踊るギリシャ神話の「オルフェウス」、そしてロハスさんが踊る「羅生門」の3作品を母が振り付けました。どの作品も内容が濃く深い作品でした。

母も、ロハスさんやレモントさんを指導する時の目はいつにも増してとても真剣でした。2人ともプロなのでもちろんテクニックは言うことありません。母は表現力の指導を細かい所までしていました。羅生門の夫を殺す時の表現、殺した後の表現、そしてオルフェウスのあの世へ行く前の表現、行ってからの表現などを、自分が経験していないのにまるで本当に経験したかの様に、1つ1つの動作に対し説明し、自分が踊りを見せながらロハスさんたちに教えていました。私は改めてすごい振り付け家だなと思いました。決して誰もがこの深い名作を踊りで表現し作品にできることではありません。

ロハスさんとレモントさんはプロなのに、全く威張っていなく、純粋でいつも謙虚に、「はい」「はい」と母の指導を一生懸命に聞き、わからない所は積極的に質問していました。そしてこの様に母とロハスさん、母とレモントさんお互いの情熱がぶつかりあいながら、1日1日と本番が近づくほど作品がどんどん良くなっていきました。

そして本番では最高の踊りを見せてくれました。母が指導した目の向き、感情、手の表現全てを彼女達は見事にこなしていました。観客もびっくりしていたみたいでした。ものすごい拍手で舞台は終わりました。

私は今回、母とロハスさん達の2人の踊りを創り上げていく過程をずっと見ていてすごく勉強になりました。

2人にいちばん感動したことは、前にも書きましたがプロなのに謙虚で純粋だという事です。これでなければ本当のプロのダンサーにはなれないし、母の振り付けも踊れないという事がわかりました。「大切なこと」を又1つ学ぶことができました。

セーヌ 2001年 冬 第40号掲載

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