Ruxandra Racovitzaさんへの
インタビュー(前編)

インタビュアーIrene Grevet(イレーヌ・グレーブ)

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―― リュクサンドラ・ラコヴィツアさんは、ジジ・カシュレアヌ・カンパニイに舞踊家として所属しておられますが、あなたのポジション(地位・役割)についてお話下さい。

リュクサンドラ・ラコヴィツア(以下R.R): 私は、ジジ・カシュレアヌ・カンパニイでトップダンサーであり、そしてアシスタント教師もしています。それと並行してブゥローニュ国立学校(Conservatoire National de Boulogne)と国家資格(diplome d' etat)をとるための学校「R.I.D.C」(Rencontres International de Danse Contemporaine)で準備をしている未来の教師達に、現代舞踊を教えています。

―― 貴方は、どのような行程を経てプロになったのですか?

R.R: 私とダンスの出会いは、とても偶然的なものでした。私は色々なダンス学校へ通い、そこで出会った人達に刺激を受け、鍛えられたおかげで、ダンスがとても好きになり、魅了され、自分の生涯をダンスに捧げる事になりました。私はBucarest(ブカレスト)の舞踊学校(I' Ecole Supereure de Choregraphic de Bucarest)のdiplome(免状)を持っており、以前ルーマニア国立オペラ(I' Opera National Roumain)のプリマでもありました。

今は、20年前から、ジジ・カシュレアヌ・カンパニイでエトワール・ダンサーを務めています。それから今、私達はレンヌ国立学校(Conservatoire National de Rennes)で現代舞踊の創作を彼らと共同でやっており、それに協力しています。

―― 貴方が今の地位にたどり着く為に、特別に必要としたもの、もしくは他の人にないものとか、何かありましたでしょうか?

R.R: 特にはありません。がしかし、この職業を続けて行くには、剛毅さ、粘り強さ、そして情熱を絶えず燃え上がらせている気持ちを、持っていなければやり遂げられません。今まで自分たちが出会った先生方の影響を受けて、それがダンサーを育成し、又そこから各自自らの道を見い出して行くのです。

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レッスンをするリュクサンドラ氏

―― 貴方にとっての芸術家(アーティスト)の定義とは何ですか?又、芸術家はどの様にその要素を表現し、証明して行かなければならないのでしょうか?

R.R: 芸術には多様なスタイル(形)がありますが、芸術家は、他の人達を感動に導くことが出来る能力を持っています。芸術家は、自らの表現方法で、人間、その生き方、全てのものから起こり得るものを全てまとめ合わせ、それを復元して行きます。勿論、努力も必要とされますが、それ以上に直感、感性、そして才能もとても必要とされるのです。これらは決して、学んで習得されるものではありません。

―― 貴方にとってダンスとは何ですか?

R.R: ダンスとは"生きている芸術"です。上演(スペクタクル)で、それらはつかの間の魔法の瞬間です。生命や光、そして"状態"の頂点なのです。ダンスは演劇とは違い言葉を使えず、自らの肉体で全てを表現するしかありません。ダンスには色々な事柄が複雑に織り込まれているのです。それらは、人々が日常生活において特別に意識していない事であったり、人生の一場面であったり、全ての動きにあらゆる要素を織り込んで行きます。そのためには、自分自身をオープンにし、物事を注意して聞き、探求して行かなければならないのです。

私にとってダンスとは不可欠なものです。それこそ生きるために呼吸するのと同じ程、ダンスは私自身なのです。私は毎日同じようには踊れません。とても正確な動きでさえ、同じものを与えてはくれません。がしかし、その運、不運(浮沈)が私の経験を豊富にさせてくれます。この職業に自分の生涯を捧げる事が出来るなら、こんなに素晴しい事はないと思っています。

―― ダンスにおいて振付家の役割とは何ですか?

R.R: 振付家は創造者です。彼はカンパニイのために舞踊言語を作り、来世に生き残る様々なスタイルを創り出します。ダンサー達はいくら各々に能力を持っていても、この言語(表現)を表す翻訳者(演技者)でしかないのです。振付家は、技術的な事を活用し、師が弟子を導くように、ダンサー達を正確な方向へ導きながら練習をさせます。

理想を言えば、振付家が一つの上演だけに必要なダンサーを選ぶのではなく、彼の創出した舞踊言語(Langage Choregraphique)全体を理解するように、彼らと一緒に時間を過ごし、各ダンサーの能力を知り、その環境の中でダンサーを選べれば一番なのです。

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インタビューに応えるRuxandra Racovitzaさん

―― どの様にダンスを教えなければならないのでしょうか?

R.R: 原則として、よい教師には信頼できる良い生徒達がいますが、悪い教師はそれらを失ってしまいます。教師は生徒達に、未来のいかなるオーディションにも通用する技術を教えていかなければなりません。そして又、教師は生徒達を技術的に上達させながら、進展した踊りを踊らせるように導いて行かなければなりません。

つまり技術だけでなく、それらを生徒自身のものに出来るようにさせるのです。ですから生徒も、ただ優れた技術を授業で習うだけではなく、それを自分の中で踊っているという気持ちを持っていなければなりません。

教師はどんなに大変であっても、生徒達に踊る楽しみを知ってもらわなければなりません。

教師は生徒の素質が頂点に到達するように、生徒の成長を助けて行かなければなりませんが、それ以上のことは出来ません。なぜならば、本物のダンサーに必要とされているのは、技術的なものだけではないのです。自らの能力を自らによって証明しなければならないのですから。

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リュクサンドラ・ラコヴィツアさんとイレーヌ・グレーブさん(右)

-以下、次号へ続く
写真:瀬河寛一

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